うーはここで色々かくつもり

しがない学生。二次元が理想過ぎて三次が見れない。作家になる為日々精進。

「ラヴソング」を観て #ラヴソング #吃音

どうしても書きたいことが出来てしまったので書いてみる。

 

今週の月曜日9時からフジテレビで、所謂月9という枠で放送が始まった「ラヴソング」。風の噂によると、ヒロインが吃音症持ちという設定らしい。

それを知ったのは放送後だったが、驚いたし関心が沸いた。何故なら吃音者が制作に関わっているとも聞いたためである。友達の音ゲーマー界隈でもドラマの話題が出ていたけれども、その人によると、吃音者がヒロインというのは本当らしい。

不覚にも一話は見逃してしまった。録画もしていない。2話から観てみるかと次週から録画をした。

ここで不思議に思ったことがある。月9で福山雅治が主演のドラマをやるということは以前から知っていた。にも関わらず、ヒロインが吃音者であるだなんてことは放送後まで耳に入ってこなかったのである。もし知っていたなら録画していただろう。一応吃音者のコミュニティーにアンテナを張ってはいる。だから風の噂を耳に出来たのだが、この噂は放送前から行き交ってはいなかったのだろうか。宣伝などはしていなかったのだろうか。

幸い、フジテレビが一週間無料でネット配信していることがわかった。とりあえず昨夜見てみた。

 

少し自分語りをさせていただこう。

私が吃音症に罹ったのは小学生の時のある朝。朝礼で日直か何かの仕事をする為に級友の前で話そうとした時に、突然声が出なくなった。そう記憶している。その以前から症状があったのかもしれないが、自覚があるのはここからだ。

人間のような知的生命体にとって、吃音症に限らず言語疾患は手錠よりも制限になると思う。私もそれなりに悩んだし悩んでいるし、今でもしんどい。しかし、治そうという意思のある期間は短かったと思う。

理由はただ一つ。治る確証が無いと知ったからだ。治療しても治らないかもしれないし、治療しなくともある日突然治っているかもしれない。むしろ吃音と上手く付き合った方が楽だと。

じゃあお前は吃音を受け入れているのか。否だ。僕はこんなクソみたいな足枷を自分の一部だなんて絶対に認めたくない。

だというのに、治そうという努力をしていない。そういう人間の文章であるということでご容赦頂きたい。

 

さて、自分語りが長くなってしまったが、本題に戻りたい。

ネット配信特有の種類の少ないCMの後、本編が始まる。

福山格好いい。私もこんな容姿だったらなあとか思いながら観ていると、出て来たヒロイン。周りが話している中で口も開かず、ただ相槌を打つだけの女性。まあこの子が吃音症のヒロインだろうな、と。

相槌だけでは会話はできない。漸く口を開き、声を出…そうとする。

ハッとした。

そんな調子で職場のシーンが続き、それが終わると自宅へ戻るヒロイン。

家族に話しかけるヒロイン。

気付いてしまった。吃りながら話そうとするヒロイン。まるでホームビデオで吃りながら話す自分を見ているような拒否感を覚える。目を背きたくて仕方がない。気付くと涙目になっている。

それくらい女優さんの吃音の演技は上手だと思った。上手すぎて、不快に感じざるを得なかった。勿論女優さんは悪くない。

ただ、その姿を観て、もうこのドラマを楽しんで観ることは無理だろうと思った。私にとって創作物は現実とは異なる場所、現実逃避の場所だ。そこで、こんな自分の写し鏡を見せられるのは、私が一番嫌うことだ。昔「私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!」を観るのが耐えられなかったのも、これが原因である。

心を無にして観ることにした。

上司によって医師の元へ連れていかれるヒロイン。上司の言う事は吃音者からしてみれば心無いなと思ってしまうが、知らない人からしてみれば当然の対応だろう。むしろ、医者の元へ連れて行ってくれただけ良い人である。

この上司の姿、これは恐らく「吃音者が思い描く吃音を知らない健常者」の典型なのではないかと考える。実際吃音を知らない人がどうなのかは知らないが、これに関しては根拠はないが確信がある。

果たして、吃音を知らない人は本当にこうなるのだろうか。人によりけりだろうとは思うが、皆がこうだったら現実は残酷である。「吃音=上手く喋れないと見ただけでわかるシンボルがあったらいいのに」と思ったことのある人も多いのではないか。

福山の診察を受けるヒロイン。ヒロインが随伴運動を起こしているのに気付いた。「随伴運動」とは吃りと同時に無意識に出てしまう動作、彼女の場合は足を叩くアレのことだ。その後もヒロインは頻繁に随伴運動を起こしている。吃音の描写に関しては、相当にリアルだと言っていいだろう。

前半全体に言えることだが、ヒロインはかなり拗らせてるなあと思った。何がというと何かを伝えようとする時の態度だ。諦め切れていないのに話すのを諦めているのが判る。自分はこうじゃないよな、と思う一方で、自分もこうなのではと不安になる自分もいた。

吃音の描写に関してはどうしても自分と重ねてしまう。辛い。

飲み会の予約。電話が死ぬほど辛いというのは吃音者共通の認識だろう。あのヒロインのように、電話の前で話すことを何度も何度も反復するのはよくあることだ。それで肩に力が入って余計に上手く話せなくなる。

結局わざわざ店まで行って予約、なのに同僚の気まぐれで店が変更になり、そのまま同僚が予約を取る。ヒロインは当然相当に傷付いていた。

私だったらむしろ「また電話をさせられなくて良かった」などと思うだろうなあ、と胸の中で沸いた。

そうして仕事をサボるヒロイン。ここに関しては触れたくない。

家族との衝突、家を飛び出したところで福山に遭遇、言語聴覚士による診察を受ける。

この診察のシーンもかなり力が入っていると思う。うろ覚えだが、「吃音に悩む貴方なら話し方を馬鹿にされる辛さは~」のようなセリフに分かる。

この回は今後二人の繋がりになるであろう歌をヒロインが歌い、その後部屋を飛び出して終わる。

 

観るのが辛いドラマだった。それも出来が良いから辛いというのが複雑である。

吃音を扱ったドラマで私が最後に観たのは「英国王のスピーチ」である。吃音症に悩む英国王ジョージ6世言語療法士ライオネル・ローグの歩みを描く史実を基にしたドラマ映画だ。アカデミー賞を獲るなど海外では好評の作品で、実際誉れ高き国王として演説を果たすジョージ6世の姿は爽快なものだった。

私が「英国王のスピーチ」を観たきっかけは、勿論吃音をテーマにしたものだったからだ。知り合いにこれを観た人がいなかったのを残念に思った思い出がある。

小説にも吃音をテーマにした作品はある。私は重松清氏の「きよしこ」「青い鳥」を幼い頃に読んだ。

先にあげたこれらと「ラヴソング」では、私の中で大きな違いがある。それは「現実感」だ。

前者は私の中で娯楽として楽しむ余裕があった。後者にはそれが無い。後者は余りにも自分自身に迫っているからだ。

吃音の症状、吃音者の苦悩、それが自分を見せられているような気がして逃れられない。女優さんは新人さんと聞く。凄い人だと思った。

 

ここまで書いたはいいものの、落としどころが判らなくなってしまった。

私にとってこのドラマの優れている部分は、偏にリアルさだと思う。

だが、娯楽として創作物を好む者としては、非現実的でもいいからヒロインには幸せになって欲しいところである。

あと、仮面ライダーファンとしては、菅田くんの活躍はうれしい。

 

 

追記:

放送終了からしばらく経ったが、第1話の感想だけ書いてそのままというのも気持ち悪いので勝手に総括。

実は忙しかった上に録画ができていなかったので4話辺りから中盤まで全く観ることが出来なかった。それに気付いたのが終盤も終盤だったのだが、幸いTwitterから何となくの様子は耳にしていたので、とりあえず録画ができた回から再度追うことに。

思えば、この作品は「吃音と向き合う」から「恋」、そして「歌を歌う」ことにステップアップすることで、さくらの成長を描くものであった。

序盤の「吃音と向き合う」というテーマは私自身にぶっ刺さる内容の為に、観るのがとても辛かったのだが、そこから既に抜け出し、歌を歌うことが目標となった終盤はとても楽しく観ることができた。悩む姿に自分を重ねなくて済む、吃音への苦悩が更なる舞台への飛躍に繋がりつつある姿は、吃音者として観ていて心地よかったのかもしれない。

生きるのは辛いことだらけだ。だけど、ちょっと勇気を出してみれば、それを支えてくれる人だってきっといるし、何かが変わるかもしれない。そういう勇気をくれる作品だったろう。

神代への忘れられない好意を自覚し彼の許を去ったのも、幸せな終わりとは言えないかもしれないが、さくらの成長の証だと思う。彼女はこれからも歌い続ける。

にしても、空一のキャラに惹かれた。ホント良い奴。空一が傍に居れば、さくら大丈夫だきっと。

今作には劇中歌が多く出てきたが、どれも耳に残る良い曲だった。流石は福山。

というか、演技にしても、歌唱にしても、さくらちゃん上手すぎでしょ。ラヴソングで一気にファンになってしまった。

一視聴者として視聴率とか気にするのは余計なことだと思うのだけれど、数字は取れなかったと聞く。まあ仕方ない。フジが落ち目なのは昨今よく言われていることだし、吃音症で「喋れるのに上手く喋れない」という主人公は、少なくない視聴者を苛立たせたことだろう。これはイコール現実の吃音者への目と言って良い。そう思うと悲しくも思うが、今作を観た月9固定層が吃音に対し少しでも理解をしてくれたなら嬉しい。

 

やはり無意識に吃音者として感想を述べてしまったが、よく出来たドラマだと個人的に思う。

有料ではあるがネット配信もしているので、興味が沸いたら観てみてほしい。

まあこの記事、がっつりネタバレしてるんですが。