うーはここで色々かくつもり

しがない学生。二次元が理想過ぎて三次が見れない。作家になる為日々精進。

フォースを再定義する【最後のジェダイ感想】

11月になったと思ったらどんどん肌寒くなり、寒いと思っていたらもう12月。冷えと暖房によって怠さのような眠気が一日中纏う日々ですが、皆さん如何お過ごしでしょうか。

急にお金が欲しくなりバイトを増やしたは良いものの、正に師走の如く忙しくなり、それによりここも放置気味となっていたような違うような。でも書きたいことは沢山有るのです。結局夏の末に観た映画についても全部書けていないし。

そう、映画です。折角の冬なので、また夏のように毎週映画館に行こうと決めて12月中旬。12月に入ってから調子に乗って週3ペースで映画館に通っております。

ということで豊富にあるネタの中で、今日は先日公開された話題作について。

スター・ウォーズ / 最後のジェダイ」観ました。

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↓前作についても公開時に書いてます。

手違いで吹替版を見てしまったのですが、前日に前作も吹替版で観たのでその点については難なく。むしろ、前作は回想シーンなど吹替の方が情報を拾いやすい場面もあったような発見に公開から2年経って気付いたり。

まずネタバレ無しでの感想ですが、ジェダイ神話(=ファンにより神格化されたスター・ウォーズ、特に旧三部作)を打ち壊す作品という印象だった。

それはルークの扱いにも現れていて、ヒーローとしてのルーク・スカイウォーカーを夢想してきたファンにとっては難のある作品かなと思う。しかし、決してルークを貶めた作品ではない。人間としてのルーク、次代のジェダイとして旧三部作で描かれたルークのその後としては、個人的には解る、魅力的なキャラであることに変わりはないと感じた。

映画作品としては正直そこまで面白くない。だが「フォースの覚醒」を経て、ファンとして観たかった続編は観られた。前作において導き手に恵まれないままフォースに目覚めたレイと共に、我々もフォースの調和はどうなったかについて導かれないまま続編を待ち望んだからだ。

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公開前日にパンフ買いに行くくらいに期待してた

※以後ネタバレ気にしない内容

前作のように今作も賛否割れている印象だが、一番の原因がこれだろう。

今作は終盤までレイとレジスタンスが別行動を取る。故に2つの物語が並列して進行するのだが、スペースオペラとしての物語は主にレジスタンス側の物語で進む。

前作の直後の話である今作。レジスタンスはファーストオーダーの最終兵器「スターキラー」を破壊したものの、ファーストオーダーはレジスタンスのディカー基地(前作にも出てきた主要基地)に総攻撃を仕掛ける。これに対してポー・ダメロンの駆るXウイングが単騎で奇襲を掛けるのだが、この場面は非常に面白い。笑いどころと爽快さを兼ねたポーの活躍、ポーに続くスターフォートレスの進行の焦燥感、冒頭でいきなりコレなのでもう期待させられるわけである。

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期待したんだけどなあ。

奇襲に成功し、レジスタンスは退却。そのままハイパースペースにジャンプする。だが間もなくファーストオーダーも追尾し、反撃とばかりに猛攻をかける。ここのカイロ・レンのシーンとか結構好きだし、宇宙空間からふわふわ帰還するレイアも悪くはないと思うのだが、問題はここから。

ファーストオーダーの猛攻により、レジスタンス幹部はレイアを残し全滅、母艦は中破、Xウイングは軒並大破にまで追い込まれたレジスタンス。指揮権を移譲されたホルド提督は残った艦での撤退を選ぶが、無策に逃げるのではいずれ燃料切れで追い付かれるとポーは異を唱える。先の戦闘での独断専行を理由にホルドはポーを相手にもしないのだが、これ以後続くレジスタンス内での対立がどうにも盛り上がらない。

こんな劣勢の中で仲違いしている場合か。いや、展開としては解る。エース故にスタンドプレイが目立つポーだが、それにより損害が出た。だから指揮官側はポーを遠ざける。解る。だが、既に追い詰められている展開の中で、ポーの目線で物語を映す(=ホルドの考えが分からない)ことでホルドにヘイトを向ける、仲間内で起こる衝突に視点を置く物語としての面白さが分からないのだ。

一方、恢復したフィンはポー、艦内で出会ったローズと共に密かに行動を開始する。ハイパースペースジャンプをしても尚追い掛けてくるファーストオーダー艦隊が追跡機を利用していると踏んだ3人は、これのクラッキングを図る。追跡機を載せたスター・デストロイヤーのシールドを突破するために「コード破り」が可能な人物が必要なため、フィンとローズはその人物が居るというカジノ都市カント・バイトへ向かう。

ローズも又賛否ある人物のようだが、カント・バイトの場面についてはいい。ここでの描写が後に述べる「フォースについての扱い」にも繋がるため必要なシーンである。

二人を待つポーであるが、遂にホルドは燃料切れが間近となったレジスタンス旗艦を捨て小型艇に移ることを選ぶ。ポーは自身たちの作戦をホルドに打ち明けるが、またも聞き入れられない。するといよいよ、ポーは自身の賛同者とともにホルドに反抗し、ブリッジを占拠する。

いや、この展開要る?レジスタンスもうピンチじゃん!もう生きるか死ぬかの瀬戸際なのに自分たちで首絞めてどうする!?ポーたちが占拠するブリッジに突入したのは、目を覚ましたレイア。驚いたポーたちはそのまま制圧され、気付いたら小型艇の中。ここでホルドの目的が判明する。惑星クレイト、ここに存在する旧反乱軍基地を目指していたのだ。

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実はホルドも無策ではありませんでした、しかもホルドは旗艦に一人残り囮になります。まあ破綻はないけど、期待してるのはこういう予想外じゃないんだよなあ…。パンフレットを読むと、「女性の強さ」みたいなものを重視しているように見える(昨今の映画の枕詞のようにも感じるが)が、その「女性の強さ」をポーの英雄性(=男性性)と対立させて逆に物語をかき乱すって啓発としても逆効果じゃないかと。しかも、ファーストオーダーからの逃走劇、その中で対峙するのが二手三手先を行くファーストオーダーの策略ではなく、仲間内の不理解というのが面白くない。だってこの間ファーストオーダーはずっと追いかけてるだけなんですよ?

一方で、紆余曲折を経るも、フィンとローズはシールドを破れる男、DJを見つけ出してカント・バイトを去る。この際にフィンはDJから正義と悪を分かつことの無意味さを聞かされる。このシーンは作品全体のテーマにも掛かっていて良い。その後難なくスター・デストロイヤーに突入する3人だが、ファーストオーダーの策によりフィンとローズは囚われの身に。キャプテン・ファズマは2人の処刑を執り行う。

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ホルドの決死の攻撃によりスター・デストロイヤーは崩壊、これにより間一髪難を逃れたフィンはキャプテン・ファズマとの一騎打ちに挑む。前作では終盤まで逃げ腰だったフィンは今作精神的にかなり成長した。幼少期からトルーパーとしての教育しか受けてこなかった彼にとって、レイの為とは言えレジスタンスに身を投じたことは大きな糧となったのだろう。レイとフィンのストーリーラインを分けたことも、フィンの成長を描くという点で役立っている。

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その後、フィンとローズはなんとかクレイトでレジスタンスと合流。古びた要塞と骨董品の装備でファーストオーダーを迎え撃つ。

ファーストオーダーが投入したのは小型スターキラーとも言える大型砲。まずこれを破壊するためにポーやフィン、ローズ達はスピーダーで突撃をかける。だが、ファーストオーダーの攻撃によりレジスタンスのスピーダーは瞬く間に数を減らし、それでもフィンは己が身を犠牲にしてでも砲台を破壊せんと肉薄する。そして大型砲発射の間際、エネルギー波に飲まれようとするフィンのスピーダーを救ったのはローズ。体当たりによりフィンは命を救われるも、ローズは重傷を負う。

ここで発射される大型砲を背後にフィンとローズのロマンスが展開されるのだが、これも…感動的なシーンとして「見せられてる」感が強かった。ロマンスをやるなという訳ではない。フィンの特攻が叶えば良かったという訳でもない。カント・バイトの一件でフィンとローズに絆が芽生えていたのも分かる。ただ、我々はファーストオーダーに対するレジスタンスの逃亡劇、抵抗が見たいのに…という感が拭えないのだ。

フィンやレジスタンスの物語で展開されるスペースオペラとしてのスター・ウォーズ、今作は全体としてレジスタンスが勝手にコケて追い詰められていくように見えた。それが楽しくない。

この後の展開については、後述する「フォースを巡る物語」と合体するので後で。

  • 「調和したフォースのその先」の物語は面白い

レイ視点での物語は前作のラストから。遂にルークと邂逅したレイ。レイはルークに助けを求めるも、ルークは取り合わない。曰く「ジェダイは滅ぶ」と。ジェダイマスターとして弟子にとったベン・ソロ=カイロ・レンがダークサイドに堕ちたことに絶望したルークは、ジェダイとしてのフォースを封印していた。それでも食い下がるレイは、ジェダイの聖地たる惑星オクドーにて多くのものを見る。ルークも又、レイの類まれなる才能を見る。

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チューバッカを見て、ハン・ソロの死を知るもルークの意思は変わらない。だが、R2-D2にかつて己を旅立ちに駆り立てた映像を見せられて、ルークは固かった表情を僅かに緩ませる。そうして、レイの前で「ジェダイの道、そして何故ジェダイが滅びるかを教える」と告げる。

ルークはフォースの何たるかを語る。基本的でありながら、長いスターウォーズの歴史の中でどうしても軽視されがちだったことだ。フォースは「ジェダイの力の源」ではない。フォースとは万物に司るバランスである。旧三部作において、光と影の両方ともに触れたルークが語るに相応しい台詞である。

鍛錬の中で、レイは深い暗い、穴のヴィジョンを見る。ダークサイドに触れたのだ。

ルークとレイのやりとりは、かつてのジェダイマスターと弟子の姿を思い出させる。しかし、頑なで、だけど根は温和な老人の姿はかつてのルークそのままである。吹替版のCVが旧三部作と同じ島田敏なのもまた。

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ある時、レイはカイロ・レンとフォースで繋がり始める。遠く離れていながら意思疎通が可能となる。レイはカイロ・レンを酷く敵視しながらも、内面の触れ合いが深まっていく。

光と影を併せ持つルークと光のレイ、影のカイロ・レンという3人から描かれるフォースの調和、あるべき姿。それをレイとともに一から見直すことは、ファンにとっても新鮮で、また懐かしい。

そして、レイはベン・ソロがルークを裏切ることになるキッカケを知る。否、ベンがルークを裏切ったのではない。ルークがベンを裏切ったのだ。ジェダイとしてベンを教える内に、ルークはベンの中に深い深い闇を見る。この闇に恐怖したルークは、ベンにライトセイバーを向けてしまう。これを期にベンはジェダイと決別してしまったのだ。

老いたルークは、フォースの闇を恐れてしまったのだ。かつてダークサイドに触れ、それでも父と銀河を救った彼が。ライトサイドと共にダークサイドも受け入れられる彼だからこそかもしれない。ただ、その姿はルークのヒーロー性に惹かれるファンにとってはショックだったに違いない。だが、次代のジェダイらしいその人間性が今も昔もルークの魅力だと私は思うのだ。

レイは同時にベンの中に光を見る。彼はまだダークサイドに堕ちきっていないと。

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レイはルークの下を飛び出す。カイロ・レンを説得しにオクドーから舞い戻ったレイは、カイロ・レンによってファーストオーダー最高指導者スノークの前に引き出される。

スノークは強大なフォースによってレイを手玉に取る。そして最後のジェダイ、ルークの居場所をレイから引き出した後、彼女をカイロ・レンに処刑させようとする。

だが、カイロ・レンは不意をついてスノークを両断する。そのままレイとベンは共闘して、スノークの護衛であるエリート・プレトリアン・ガードを打倒する。この乱戦も激しく、アクション、レイとベンの連携も見ごたえのあるものである。

共闘の後、ベンはレイに言う。2人で新しい支配を作ろうと。彼はジェダイもシスも否定し、新しい旗印を立てようとするのである。そして、ベンはレイの中に見た「事実」を語る。レイの両親が誰なのかを。曰く、「語るに足らない二親、子を売った親」と。レイも無意識に気付いていた。

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スカイウォーカーの系譜はジェダイもシスも否定し、新たなスターウォーズの主人公はスカイウォーカーの血を引くわけでもなければ、シスが宿した子でも、フォースの申し子でもなく、唯の人。それがフォースに目覚める。これは正に「ジェダイ神話」、「ファンに神格化されたスターウォーズ」を打ち壊す構図である。

先にも述べた通り、フォースとはジェダイやシスという一部の人間のための力ではない。銀河の万物を司るものだ。それを巡るスターウォーズという作品が「スカイウォーカー」という血統に縛られていたのは、旧三部作、新三部作において選ばれし者がフォースにバランスを齎す物語として必要な要素ではある。しかし、その後の作品である新トリロジーでフォースを語り直すならば、スカイウォーカーではない者をメインに置くことは理に適ったことだと私は肯定的に捉える。

カイロ・レンの誘いを振り払ったレイはクレイトへと向かう。スノークに代わりファーストオーダーの指導者となったカイロ・レンもまたレジスタンスを追撃する。

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小型スターキラーは発射され、レジスタンスは多大なる被害を受ける。そこに現れたのはルーク。髪を短くしたその姿は、まるで若き日の彼のようで。彼は一人でファーストオーダーの前に立ち塞がる。

ウォーカーの一斉射撃を物ともしないルークにカイロ・レンは業を煮やし、一騎打ちを挑む。カイロ・レンのセイバーを軽快に躱すルークは「ジェダイはこれから始まる」と告げる。そして構えを解いたルークをカイロ・レンは貫くも、その身体はフォースで象られたヴィジョンであった。最後にフォースを使ったルークが生み出したのが、かつて誇り高きジェダイとなった若きルークに似た姿だったのも感慨深い。

オクドーにてルーク・スカイウォーカーは力尽き、かつての師達のようにフォースと一体となる。赤き日差しのもとで。

 

ルークやレイア、新トリロジー以前からいるキャラの扱いに関してはリスペクトを感じる作品だった。特に終盤のルークに関しては容姿も、最期も良い。

レイやベン、フィンといった新トリロジーのメインキャラについても、経緯や葛藤、成長がよく見られて「フォースの覚醒」の続編としては期待していたものが見られた。

ちなみに笑いどころは意外と多い。特にトレイラーにも映っているポーグなる小動物は出てくる度にその扱いに笑う。また、吹替版での話になるがルークの「素晴らしい、全て間違っている」は煽り性能高そうで使いたくなった。早く広まれ。字幕版ではどうなってるんでしょう。そのうち観るつもり。

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「フォース」に絡む部分はスターウォーズとして私を引き込んでくれた。普遍性という点で良い意味でディズニーらしい方向に突き抜けてくれたフォースの解釈も好きだ。前作においてフィンにセイバーを握らせたのも、そういう意図だったのかなとも思った。だがスペースオペラとしての要素が足を引っ張っていた。2つの話が平行して展開されるのだから、余計に後者が邪魔をしていたのが惜しい。

 

最後に映されるのは、カント・バイトでフィンとローズが出会った少年。少年の手にはローズに渡された反乱軍の印。箒を片手に星空を眺める姿は新しいジェダイの産声のようだった。

今作で再定義された「フォース」の形がEP9にてどう引き継がれるのか、それが今作を見て次作に言える唯一の問いである。

 ※3枚目以降の画像はStar Wars:The Last Jedi Trailer(Official)(https://www.youtube.com/watch?v=Q0CbN8sfihY)より